2008年10月28日火曜日

神経痛の症例

ここのところ、三叉神経痛、肋間神経痛、偏頭痛、坐骨神経痛がやたらに多い。
今年の気候ととても関係しているように思える。
10月下旬にしては、昼間は汗ばむような気温が多かったこと。
夕方にかけて一気に冷え込んでくること。そして、内湿の多い方に、この病気が出現しているようである。

ここにご紹介する方は、三叉神経痛の常連さんで、75才の女性。
3ヶ月ほど前は、激しく怒った後から、耳のピリピリが始まり、電気が走るような痛みで、夜中に眠れなかった。
この時は、舌が紅色で黄膩苔があった。
イライラ感がとても強い。
肝欝気逆と考え、釣藤散と四逆散を併せて3日分処方したところ、1日の服用(朝、昼、晩)で痛みがとれた。
そこで今回もご本人が判断し、余っていたこの薬を飲んだが全く効果がなく、ついでがあったので、病院へ行かれた。
神経痛と診断され、ジヒデルゴット、ブルフェン、メチコバールを処方されたが、5日経っても治らないばかりか、夜中の痛みがどんどんひどくなるので、相談に来られた。
舌は痩せており、白っぽく冷えている。
歯形もある。
昼間に汗をかき、そのままにしていて、夕方から急に冷えて寒気がしなかったかどうか尋ねたところ、その通りだと答えた。
夜になって、いったん首筋がゾクゾクし、それから間歇的なピリピリ痛が始まった。
鎮痛薬を飲んだせいかもしれないが、胃に痞え感があり、食欲がない
。臨泣、丘墟を押さえると飛び上がるほど痛む。
今回は、昼間の暑さで、水分をとり、汗もかなりかいていたところへ、寒邪が入り、内湿と合わさり、寒湿の邪が少陽の経絡を犯したと判断。
葛根湯+五苓散+柴胡桂枝湯を併せて処方し、まず1服飲んでいただき、大椎に温灸し、臨泣、丘墟のしこりがとれるよう、よくもみほぐしたところ、15分ほどで痛みが消失した。2日分の処方を飲みきられたが、その後痛みは出ていない。

この方には、血虚の症状があり、血が少ないために、易怒したり、寒邪が侵入しやすいため、現在は四物湯を処方している。これで少しでも神経痛が出る回数が減ると良いと考えている。

2008年10月17日金曜日

血流改善の痛み

骨転移、転移再発予防の為などに、多くの方にお手当てを実行していただいています。
痛みは、”通じざれば即ち痛む”と言われるように、気血の流れが滞ってしまうと、痛みが生じます。

一般的に鎮痛剤は、急場の激しい炎症以外に用いると、どんどんと体を冷やし、結果的に流れが悪くなり、難治性の痛みとなってゆきますので、慢性的に用いない方がよいと思います。
漢方薬では、血流を改善したり、温めたり、経絡の通りをよくするような方法で、痛みをとってゆくものがあります。

漢方薬と平行して、食事療法とさらには生姜湿布、こんにゃく湿布、枇杷の葉温灸、せんねん灸、ペットボトル温法、ユタンポ温法、半身浴、手足浴などを上手に組み合わせ、体を温め、血流を改善して痛みを和らげるお手当てを実行してゆきますが、お手当ての最中にかえって痛みが激しくなる方がシバシバあります。

これは、血虚で冷えがキツイ方・・・・つまり血の流れが細く滞っており、体が冷えておけつを作っているような方に多いのです。
何故かと申しますと、今まで血が通っていなかったところに、一気に血流が押し寄せ、組織の修復が始まるためです。なかったところに血が集まり、どんどんと脈打つように突貫工事を始めるイメージをしてください。
したがって、”お手当てをして悪くなった・・・・”と考えがちですが、これは治るためのひとつの課程ですので、痛みが出たら、”しめたっ”と思って、気を取り直してください。
ただ、あまりにも痛みが強く、耐えられない状況であれば、強い熱を加える方法でなく、ユタンポや温灸でじんわりとお手当てをし、ならしてならして、少しずつ血流を回復させながら、徐々に強い熱を加えるような方法をとってみてください。
お手当ては、基本的に患者さんがリラックスできて、”きもちがいいなぁ”と思える方法がよいです。リラックスできているときには、リンパ球も増えて免疫力も上がります。無理なく気長に続けることが大切です。

2008年10月16日木曜日

この季節に多い少陽の病

異常なほどに暑かった夏が過ぎ、朝晩めっきり涼しくなりました。
それでも昼間はまだ汗ばむ陽気の日もあり、かと思えばかなりの寒さの日もあり、着る物にも困りますね。

夏の陽の気が衰え、冬の陰に向かうとき、陰陽はこうして微調整されながら次第に冬に向かいます。
これは、私達の体も同じ。
人が四つ足だった頃の名残で、背中側は太陽を背に受けるので陽・・・夏の支配お腹側は地面に向いているので陰・・・冬の支配と考えると、春と秋はちょうど陰陽が半々で、体側部を示します。

現在はこの体側部に症状が出る方がとても多いです。
例えば、三叉神経痛、肋間神経痛、坐骨神経痛、偏頭痛、耳の病気、胸脇部の張る痛み、 その他、昨日まで異常が無かったのに、朝起きたら、体が重い、だるい、胃腸がスッキリしない、微熱っぽい・・・などこれらを少陽の病と呼んでいます。

こちらでは、この季節、柴胡桂枝湯が大活躍しています。
この地方だけかもしれませんが、柴胡桂枝湯がピッタリと合う女性がとても多いですね。
もともと胃腸があまり丈夫でなく、ストレスも溜めやすい傾向の方が、上記の症状に陥ったとき、常備薬として、柴胡桂枝湯を置いておくとよいですね。
錠剤も便利ですが、日頃のお勧めは煎じ薬です。お茶のようにわかすだけでよいのです。

私は、寒さで目が覚めた朝は、柴胡桂枝湯を煎じて、まずお腹を温めます。”今日はしんどくて働けないかも・・・・”と思っていても、15分も経たないうちに、いつもの元気が出てきます。娘もそうです。
この季節は、常に保健室で煎じていますので、具合の悪い方は、お立ち寄りくださいね。

2008年10月10日金曜日

ガンの温灸養生法

こちらへいらっしゃるガンの方の舌を拝見すると、舌肉が紫青っぽい色をしています。
これは、冷えて血液の流れが悪くなり、おけつ(血の滞り)があることを意味します。
臓器が冷えて、機能が落ち、解毒代謝も低下しているため、白~灰色~黄色ぽい厚い苔が生えていることが多いです。
正常な舌は、色がピンク色で、薄いベ~ルのような苔がはっている状態です。
解毒を促す漢方+食事+温灸による補陽を行うと、だんだんと舌の色がキレイなピンクになってきて、苔も薄くなってきます。

こちらでは、温灸のひとつに、滋圧器を使用しています。
陶器の中に、もぐさ芯を入れて温め、服の上から圧力をかけながら温圧できるものです。

それでは、保健室のロバ先生に、ロバ式ガンの温灸療法の説明をしてもらいましょう。
1,500CCペットボトルを2本用意し、熱いお湯を入れて両方の鼠径部を温めます。
2,背中の大椎を温圧し、背筋の添って、兪穴を温めます。
3,足の臨泣、丘墟を温圧します。
4,足の三陰交、血海を温圧します。
以上を20分くらいかけて行ってください。

ガンの方は、お腹が特に冷えており、1番、2番の衝脈と督脈を使ってお腹を温めてあげることが大切。
また、多くの方が、ストレスを感じ、帯脈が弱っているので、骨盤や腰に痛みを生じやすく、それを解決するために、3番のツボを用います。
4番のツボは、抗ガン剤等で、貧血がある方にも、血の流れが悪いおけつがある方にも有効です。
養血活血のツボになります。

2008年10月6日月曜日

百聞は一見にしかず・・・の漢方

ここのところ、メ~ル相談がとても多いのですが、ご相談によっては、アドバイス出来ない場合があります。
例えば、”ガンで腹水が溜まって、困っているのですが、何か良い漢方をアドバイスください!”というような例です。
つまり、これだけの情報では、お客様の体の状態が全く把握できず、処方や養生の仕方を決めることができません。

漢方の証の決定には、顔色、舌、爪の色、皮膚の色艶なども拝見しながら、寒熱、汗、食欲、排便と排尿状態、普段からの症状などを細かくお聞きせねばなりません。
これがおろそかになると、表面の症状はとれても、根本が治っていないために根治しないことになります。

状態を把握しないままに、適切でない漢方薬をお出しすれば、漢方といえども副作用が生じたり、かえって治りにくくなることもあります。

こちらでは、仮にご遠方でも、必ず一度は足を運んでいただき、体質や状態を把握した方にのみ、漢方薬をお出ししています。
従って、メ~ルによるご相談の常連さんも、一度はお会いした方ばかりです。

百聞は一見にしかず・・・しかりで、お電話やメ~ルでのご相談も、お逢いしてみたら、全く検討違いの証だった・・・ということがシバシバあります。
漢方と、お手当てで、しっかり養生し、自分の治癒力を高めてゆきたい・・・・とお考えの方。
病気を治すには、本当に根気と辛抱強さがいりますが、そういった真剣勝負の方のご相談のみ承っております。

漢方や養生は、その都度微調整も必要であり、決して簡単なものではありません。
お金も手間もかかります。
”何か適当に良い漢方でも・・・・”といった、お気楽なご相談は、どうかご遠慮ください。